2007年3月29日
フレスコ画研修
仕事で、湿った漆喰の上に顔料を水で溶いたもので描く湿式法のフレスコ画研修にお付き合いした。
個人的に興味のある壁画だから、かなり頻繁に観賞している私でも、描く技法を説明することは観るのと異なり、指導の先生方も私も四苦八苦。フレスコ画や絵画を専門にしていなければ、想像もできないことなのかもしれません。
自分自身の通訳の技量はまだまだと反省。ちなみに言い訳すると、ぎりぎりに依頼されたので私の準備期間が十分とはいえなかった。依頼側のイタリア人は大抵その場でなんとかなると思うらしく、もちろんイタリア人の場合はその場で臨機応変にできるらしいが、慎重派で心配性の私はそうはいかない。こういう技術用語の多い場合は、通訳と通訳される側との打ち合わせが事前にできていたほうがスムーズに事運ぶと思うのですよね。(でもイタリアはこういうケースが多い、だから当日緊張しまくる)
フレスコ画を描くことは、かなり綿密な計画的作業で、実際の壁に向かうまえに下絵を仕上げておく必要があるそうだ。フレスコ画の下絵というのは、色も部分的な詳細もしっかりデッサンしたものを意味するらしい。漆喰の壁を作り、その壁が乾ききらない4,5時間のうちに、下絵から専用の顔料を使って絵を仕上げていく。
下書きを壁に映す方法は2つあり、下絵に針で穴をあけて顔料の粉を中に入れたタンポンのようなものでたたき移す方法と、透明の(現在は)ナイロンに下絵を写して転写する方法がある。でも研修時間が短い今回は、下絵を縮小し、スライドで大きく映写して描き留めていく方法を主に使っていた。これは時間の短縮になるが、正統なやり方というわけではない。
次に仕上げと呼ばれるが、実際に壁(支持体)に向かって絵を仕上げる作業。まず全体に基本の数色の色彩傾向で色をつけていく。後に色が変えられる場合を見込んで薄い系統の色あいで、全体におおよそ完成させる。その後色彩や影や光の効果を色調の濃淡で描いていくというわけだ。だから色は何色も重ねていることもあり、あるいは最初に青色だったものが赤色系に変えることも出来る。(することもある。)
部分部分の詳細については、それからの最終仕上げの段階で描き足す。キャンパスが壁画という大きな支持体であること、したがって遠くから観賞する場合がほとんどであり、時に然程綿密に描く必要がない部分もある。
1日でできる作業はわずか限られていて、大きな支持体の場合は上のほうから一部づつ仕上げていく。しかし作業中に完成作品について迷う時間がないため、下書きの段階で完成された作品を手元に用意しておく。あらゆる詳細も含めて。
そして出来あがった下書き=完成作品を時間内に複写するという作業なのだそうだ。
あらためて過去の有名な芸術家たちの、夥しい数の部分的な綿密なスケッチが残されている意味が想像でき、それがいかに重要なものなのかが納得できる。まず下絵で完成した作品を作り、短時間で部分的に仕上げるという相当な技術と経験が必要な画法なのだ。過去の芸術家たちがあらゆる意味で評価されることは意味があり、相当の価値があることだと認識する。
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2 件のコメント:
目の前で フレスコ画作成が見られたなんて、贅沢なお仕事でしたね。
あれ、やっぱり漆喰を塗って乾くまでの勝負なのね。絵画を壁に同化させるというか...奥が深いですね。
はい、とっても内容の濃い仕事でした。
同行中訪ねたトレントの職人工房などについても、ブログ『33人のトレント人』に少しづつ更新していくつもりです。
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