最近は事前調査をよくせずに出掛けるという癖がついているので、盛んにニュースでこの『Salone Internazionale del Gusto』を話題にしていたという程度の理由で、翌日はリンゴットへ直行。なにしろ味やワインに関するフィエラと聞いたりすると、グレッグも私もそちら側へ反応してしまう性質なのだ。
トリノ市内 もスローフード主催で26日から30日まで開催されるという『味のサロン』ムード一色になっていて、土曜日の午前から近郊は車が混雑。どうやら車を一番遠い駐車場に止めてしまい、ショッピングセンターの通路を抜け通り一度外にでて、漸く入り口に到着。
すると、長い行列ができていて、列の最後にたどり着くのも1キロはゆうにありそうだった。入場にこれほど並ぶなんてウフィッツィくらいしか見たことがない。これはオーガナイズ側の失敗じゃないの、と不愉快に思いながら、入場券売り場の様子を見にいくと、この長い列はインターネットで入場券を予約した人たち専用だった。当日券との金額の差は2ユーロ、また混雑を予想して殺到したに違いない。他にグループ用、個人用、招待者用などに6つほど窓口があり、こちらには一列に4,50人くらいづつ並んでいる。でも聞けば一時間は待っていると嘆いている。
それにしてもまったく動かないのは、窓口で当日券を買いながらインフォメーションを尋ねたり、バンコマットが作動しないなど、さまざまな理由だろう。私たちも一時間以上待っているので、文句のひとつも言いたくなる。訪問者数を予想しながら、何故購入窓口を機械化してないの、とか。
入場料は20ユーロである。ヴィニィタリ-よりやや安いけれど、有名な作品の展示されている美術館やコンサートと然程変わらない金額ですよ。
会場はもうそれは『広い』。通路にチーズ通り、オイルと加工食品通り、肉とサラミ通り、ドルチェとスピリティ通り(もちろんイタリア語で)なんていう洒落た名前をつけていて、しかも一通りに50件以上出店しているから、とても1日では回り切れないことが明らかだった。
ほかにもイタリア各州の観光業者や、世界各国レストラン(築地からも寿司屋が来ていた。本物の寿司職人だ、と感激。)、イタリア各州の地方料理をもてなすスペース、カフェ・ラヴァッツァ、パルミジャーノ・レッジャーノ、サン・ダニエッレなど、イタリア特産を強調するプロモーション、別館にエノテッカ(別料金)、アフリカ、南アメリカなどのパディリオン、自然食品パディィリオンなどなど、飲食に関するある種の独特なセンシビリティを持つ業者たちが参加していた。
しかし、イタリア人とは本当に飲食には興味がつきない人種なのだと感心する。しかもどれも不思議なものでなく、『美味なもの』で『芸術的』な感じなのである。
チーズの数の多さは知っていたが、さすがにスローフ-ドが関係しているだけに、チーズの熟成にも工夫を凝らしているものもあり、値段も聞いて驚くものが多い。
バルサミコ酢も小瓶で80ユーロといった高級品もあった。これは25年熟成のもので、『酢』とは思えないまろやかな風味。25年味を損ねずに保存する技術や手間を考えると、高額になるのも仕方がないにせよ、これを隠し味にして料理するとは、なんと贅沢なことか。
エノテッカには入場しなかったが、丁度運良くハム・サラミ類とワインの組み合わせのプロモーションの一回に参加でき、プレスの人達と混じってトスカーナの赤ワイン『モレリーノ・ディ・スカンサーノ・リセルヴァ』を試飲をすることができた。ここも結構贅沢な企画で、著名なシェフがワインに合わせておつまみ(日本風にいえば)を作るというもの。ハム類だけなく、それと合わせるパンも香草入りというシンプルに見えるが、一皿でもかなりの凝り様なのだ。
会場の3分の1も回らないうちに、気に入ったものを全て買い求められないことに気がつく。それぞれに美味しいが、特別なものすぎて、試食する機会を選ぶのに苦労するに違いない。グレッグなどは、スーツケースを持ってくるべきだったと悔やんでいたが、もし買い始めたらスーツケースにも入りきらないほど、それから値段は予想もつかない。
時には試食しながら、時には眺めるだけだったが、食べ物の名前のついた通りを歩いていると、いかに普段口にしているものがシンプルであるか、ということがよーくわかる。個人的に、普段のシンプルな食事も味付けが好みに合い、大抵のものは美味しいと満足しているが、アイデアはいくらでもあり、手間はどんな風にもかけられ、さらに工夫を凝らし創造的になるものなのだ。
午後遅い時間まで、いささか疲れて飽きてくるまで少し長居した。
それからトレントに戻る時間を考えて、かなり心残りだったが会場を出た。その日『スローナイト』というポスターも確かトリノの街中で見かけたっけ、これも残念なことに無視することに。
トリノは、中心地もほんの一部しか知ることができなかったけれど、ミラノやローマなど他の大都市とは異なる印象だった。商店街を歩く人々や、ウインドーディスプレーや、建物などから受ける印象は、進歩的なものや新しい文化を積極的にとり入れる都会といったような感じだった。
新しいものと古いものが共存している景色などは、イタリアというより、ちょっと東京やロンドンやニューヨークなんかに似た、ドライな感じを受けた。
高速を走りパダナ平野を抜け、ヴェローナまでくると、すっかり馴染みの景色が見える。そこから北方向へ約90キロにトレントがある。イタリアにはいろんな顔があるな、なんていつも思うのだ。
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