2007年6月4日

パリの石畳

和田俊著 朝日新聞社

<カバー紹介文から>
朝日新聞特派員として
パリ市サンビクトル街14番地に
居を定めた著者は、
さまざまな風に吹かれ、
さまざまな人に出会う
人々の心を魅了し続けしつづけたてきた
この街角から、
パリ、フランス、ヨーロッパ、
海のかなたの日本について語る
好エッセー49編

イタリアに住んでいる現在でもフランスという国は近くてなかなか遠い国。というのも近頃は旅行も車で移動というケースが多いので飛行機でわずかな距離のパリ行きなど、いつか行けると思いつついつも後回しになっている。

車で国境を超えてフランス国内へは数回訪れたことがあるが、同じヨーロッパの国でも景色が異なるように、文化や習慣もイタリアとは似通っているがやや違う国民性をもつ国というのが、ちょっと足を踏み入れた時の私の感想だ。

この文庫本はかなり(相当年数が経っている)前に読んで本だなの隅に誇りを被っていたものだが、近頃フランス語をかじっているから再読したくなったのだ。

カバーの紹介文の通り、著者は当時の朝日新聞特派員で文庫本になったのは1983年。EC加盟国が9ヶ国と記載されているから、時代の経過はあるものの、パリの街はもとより、ヨーロッパ生活の雰囲気を十分味わえる。たっぷり写真の入った近頃の旅行ガイドブックなんかよりはずっと想像をかりたてる。

当時に比べて今のパリはきっともっと早いリズムが生活のなかにある違いないが、フランスに対する日本人がもつ印象というのは、たとえわずかな期間であっても相変わらず、同じような驚き、感動があるのではないか。そしてこの好印象が発端でヨーロッパ文化に対する憧憬のようなものもどこかに生まれるに違いない。

このエッセイを好ましいと思うのは、見たものや感じたものを『憧憬』というフィルターを通しては描いていないところ。異文化にふりまわされずにそこに立ち止まって見渡して、目に入るものや体験することを大袈裟な装飾をせずに綴っているという感じを受けるからだ。

フランス語のコースはもう終了するが、やはりせっかくだから、ひととおり聞いたり話せるようになって近いうちにパリ行きを実現しなければ、などと期待を膨らませてくれた再読の一冊だった。

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